クリスマスだからといって、沸き立つ気持ちも特になかった。そも、真柴の家系には無縁なイベントであり精々友人と遊びに行く、その程度の認識だったのだ。それなのに今年は少し違っていた。

いくつかある理由のなか、最たるものはパーティーを予定しているということ、その面子には文俊がいることだった。恋人として過ごす初めてのクリスマスであることも相まって、近付いてくる日どりに気持ちが高揚していくのは初めての経験だ。

――だというのに、その日を迎えてみれば、何処かの誰かさんによって齎された予想外のアクシデントで大残業。イブはイブで休日出勤だったというのにこれは苛めだろうか。仕方なく文俊に遅れる旨を連絡すると、文俊よりも途中で通話に割り込んできた光香の方がお冠だった。

「ケート先生ほんと怒った方がいいよぉ、シバちゃん仕事しすぎ。過労死したらやだよ!」
「まぁまぁ、シバちゃん頑張り屋だからね」

そんな二人の会話を電話越しに聞きながら、目の前のパソコン画面を遠い目で見る真柴だった。すごく楽しそうだ。出来ることなら今すぐ合流したい。

そんなこんなで文俊の家に辿り着いた時には既に夜も更けていた。玄関にはいつかのように様々な靴が置いてあるわけでもなく、見慣れた文俊の靴がいくつか並んでいる。きっと集まった面子は既に帰ってしまったのだろう。文俊も普段なら寝ている時間だから、仕方ない話だ。靴を脱いでそのまま居間へと向かうと、人の気配がした。もしかしてまだ起きている?

「あやさん、遅くなってすみま……」

言葉は最後まで続かなかった。何故なら覗き込んだ居間には文俊がいたからだ。ただし、その両腕と首元に緑色のリボンを結んで。

こちらの存在を認識した文俊は、まず「ち、違う、」と謎の否定から入り、唖然としている真柴へと『自分ではなく光香や真紘が巻いた』『取ろうと思ったが固結びされていて一人では解けない』といった旨の説明をしていった。生憎真柴の耳には半分くらいしか届かなかったが。

じわじわと赤くなりながら、拘束された両腕で顔を隠す仕草が酷く愛らしい。手にしていた鞄を置いて、文俊の前に膝をつく。彼の両腕に巻かれたリボンの端をつまんでみると、なるほど確かにこれを解くことは難儀そうだ。リボンを注視する真柴に不安になったのか、こちらの名前を小さく呼んでくる文俊に、緩む顔を隠しきれずに笑った。

「解くの、なんだか勿体ないですね。プレゼントみたい」

言いながら、リボンの端をゆるく引っ張って腕を顔から外させる。吸い寄せられるように啄んだ唇からは、ほんの少しの甘い味がした。御褒美として受け取っていいだろうか。あまりに予想外で、かつ可愛らしい状況に既に真柴の理性は飛びかけていた。離れた唇に、口端を舐める。たったこれだけじゃあ、全然足りない。

「ねぇ、あやさん、先に俺がプレゼント、貰ってもいいですか?」




//プレゼントを頂戴(真柴と文俊のはなし)







2018-11-04