ニカすきだよだいすきものすごいすきニカのためなら死ねるスカイツリーからバンジーできるほんとうすき、だいすきあいしてる。 そんな感じの事を話したら、カーペットの上に座ってコントローラーを握っていたニカはきょとんと俺を見て静かに笑った。 どちらかと言ったら苦笑に分類されるその笑顔も、黒い睫毛に縁取られた黄緑色の瞳も、コントローラーを支える指も、ふわふわした髪の毛も、すべてが好きすぎて仕方ない。わぁっとすきだって気持ちが溢れて溺れてしまいそうだ。どうしようもなく、ニカがだいすきだ。 「どうしよう、ニカ、幸せで死にそう」 「そんな死因、聞くこと、ないよ? せーやさん」 「じゃあ俺が一番初めかな」 真顔でそう返すと、くすくすニカは笑みを溢した。いや、本当に冗談抜きで、告白を受けてもらった時は頭がふわふわしてくるくらい幸せでこのまま死ぬんじゃないかとさえ思っていたんだぞ。なんて、信じてもらえてないんだろうなぁと少しむくれてしまった。 「ニカ、ニカ」 「? なに」 「煙草吸いに行く」 煙草を吸うという俺の行動の前には、必ずあることがついてくることを、ニカは既に知っている。気付いた彼は酷く複雑そうな顔をして目を泳がせた。心なしかその頬が赤いのはきっと俺の気のせいではないと思う。 ケースから煙草を一本取り出して、ちゃちな百円ライターと一緒に右手に握りこむ。そっとニカの頬に手を添えてそのまま唇に口付けると、彼はくすぐったそうに小さく身を捩った。 額同士をくっつけ合ったニカの黄緑色の目と目が合って、どちらからともなくキスが始まる。「だいすきだよ」キスの合間に呟くと、ニカは合わせかかった唇を少し離して「俺も、」と目を細めて笑った。愛しい子。きっと本当に、ニカのためならどんな苦しみでも受け入れられそうな気がする。俺は浮かれながらもがいていられる。 重ね合わせていただけの唇を角度を変えて軽く食む。促すままにニカが軽く唇を開いたのをいいことに、するりと舌を侵入させた。瞬間俺の脇腹辺りの服を掴んでいた手に、無意識にか、ぎゅうっと力が籠る。上手く息継ぎが出来なかったのか、小さくニカがくぐもった声を零したけれど、その声すら、仕草すらもが愛しくて呼吸も飲み込みそうなくらい深く口付けた。ニカの香りがする。ニカの体温が此処にある。ニカが此処にいる。目を閉じればその感覚はずっとずっと強くなって、俺はまた途方もない幸せに溺れる。 唇を離すと、息の上がったニカが自分の濡れた唇を舐めた。赤い舌がちらりと覗く様に内心目を奪われながら、後頭部に手を差し込んだ。暖かい体温とさらさらとした感触。もう片方の手でニカの赤い唇をなぞると、触れた所から指がじりじりと麻痺してゆくように熱を持った。 堪えれなくてそのまま唇を舐めるように口付ける。生理的な涙で潤んだ黄緑色の目と視線がかち合った刹那、ぞくり、と背筋に悪寒にも似た何かが走って、困った。 「……た、ばこ、は?」 世の中には黄緑色は沢山あるというのに、こんなにも俺を動揺させる色はこの子の目だけだという事実。抑えきれない衝動が、勝手に口を開かせる。 「煙草より、ニカが欲しくなった」 あぁもう、本当に、死んでしまいそうだ。 //麻痺を連れて、恋(星也とニカノールのはなし)
2018-12-19 |